少子化が継続した場合の大学の淘汰と「学歴デフレ」について

コロナ禍以降、出生率が激減している日本において、18歳未満が人口が減ることは確定している。今後の大学受験の変化や「学歴の価値」はどう変化するのか、を考えてみます

日本が少子高齢化しているという話は長らく言われ続けているが、具体的な数字がどの程度か認識できているだろうか。前回記事で、大学受験のことを書きながら、少し気になったので調べつつ考察してみました。

現在、子育てをしている30-40歳くらいの世代は、1980〜1990年代の人が多いと思います。出生数を調べると、

  • 1980年には約157万人
  • 1990年には約122万人
  • 2000年には約119万人

の子供が生まれていました。この数字が、直近ではどのくらい減っているかというと、

  • 2016年に初めて100万人を割り
  • 2020年には約84万人、その後コロナで加速して、
  • 2025年には約70万人

に減っています。(厚生労働省,人口動態統計

浪人生などを考慮しなければ、この人口に大学進学率をかければ、競争相手がどのくらいいるのかがわかるはず。大学進学率(文部科学省、学校基本調査)を調べてみると、徐々に増えてはいるものの、

  • 2000年に39.7%
  • 2010年に50.9%
  • 2020年に54.4%、
  • 2024年(最新)で59.1%

となっており、人口減少ほど急変していないことがわかります。

1980年代に生まれた人は、18歳になる2000年ごろに進学していると仮定すると、

約157万人 × 39.7% = 約62.3万人

が大学受験していることになりますが、2025年に生まれた人は、大学進学率が65%くらいまで急増していたとしても、

約70万人 × 65.0% = 約45.5万人

と、16.8万人(約27%)も受験者数が減っていることになります。

子どもが小学校や進学塾に通い始めるタイミングは、「2035-2040年の大学受験」を見据えると、10年〜15年のギャップがあり、このライバル数の減少を踏まえると、少し受験に対する認識が変わるかもしれないな。。と思います。

加えて、大学側も学生数が減ることを意味しますので、劇的なパラダイムシフトの入り口に立っていると言えるでしょう。本記事では、マクロデータと定量的な予測に基づき、今後の大学受験市場の推移と、私たちが取るべき教育戦略を考察してみます。

1. 「2026年の崖」と年間15校が消える淘汰の時代

2024年〜2026年の18歳人口は約106万〜109万人で高止まりしていますが、これを最後のピークとして、以降は明確な減少フェーズへ突入します。上記では、私が集めたデータでの荒い試算でしたが、文部科学省も海外からの留学生も考慮した推計値を出しており、2040年には大学入学者数が現在より約12万人減少すると予測されています。(ただし、この推計は2023年にされており、それ以降の出生数が政府の推計よりも急速に減少しているので、私の推計値に近い数になるかもしれません。)

現在、日本国内に大学は約800校(うち、私立が約620校)あるとされていますが、地方の中小規模私立大学の1学年定員を約500人と仮定した場合、

「12万人 ÷ 500人 = 240校」 

となり、2040年までに実に240校分の定員が不要になる計算です。これを平準化すると、

毎年10〜15校のペースで大学の募集停止や統廃合が進む

ことになります。空想の話のように聞こえるかもしれませんが、すでに私立大学の過半数が定員割れを起こしており、大学の再編などはドラスティックに変化していくと思われます。

2. オンライン大学(ZEN大学など)がもたらすゲームチェンジ

この淘汰のスピードをさらに加速させるのが、2025年に開学した 「ZEN大学」 などに代表される、ITスキルや実学に特化した大規模オンライン大学の台頭です。

最大のインパクトは、その圧倒的なコストパフォーマンスにあります。 既存の中堅・下位私大の学費が4年間で約450万〜500万円かかるのに対し、オンライン大学は約150万円程度で済みます。

比較項目 既存の私立大学(文系) オンライン大学
年間学費 約110-130万円 約30-40万円
4年間の総額費 約450-500万円(+下宿代等) 約150-200万円
就職への貢献度 汎用的(個人の活動による) 専門的な技能取得

「とりあえず大卒資格を取るため」に奨学金という負債を背負って特色のない大学へ通っていた層は、合理的かつ就職に直結するオンライン大学へと流出する可能性があります。これにより、下位・地方私立大学の淘汰は想定以上のスピードで進むでしょう。

3. 難関大の競争倍率は下がらないが「質」は下がる可能性

では、母数が減れば難関大学は入りやすくなるのでしょうか。結論から言えば、見かけ上の競争倍率は下がりません。

中間層からの「上方シフト」や、女子学生の難関校・理系進学率の向上により、上位校への一極集中が起きるためです。ただし、大学側が定員が減らさずに、受験人口の絶対数が減った中から受験者を集めると、今までであれば中堅大学レベルの人も合格圏内に入ってきて、合格者の「最下位の点数(ボーダー)」は必然的に低下するということです。

合格者の中でのさらにトップ層の優秀さは維持されるかと思いますが、一方で、合格ギリギリのボーダー層の学力はかつてないほど下がり、同じ大学内での 「学生の質の分散(ばらつき)」 が極端に大きくなります。一部の超トップ層を除き、「難関大学の学位(ブランド)」が持つ社会的なシグナリング価値は、ゆっくりと目減りしていく 「学歴のデフレ」 が進行しています。

企業側も、新卒一括採用の文化を継続し、大学のネームバリューで採用者を判断していると、年々質が落ちていき、気がつけば、⚪︎⚪︎大学卒業生の質があまり良くない みたいな話につながり、大学卒業後の就職先選びにまで影響。。みたいなことも十分考えられます。

4. 大学は、定員を絞って、学生や教育の質をとるか

では、学生の平均的な質が下がっていくことを避けるため、合格ラインを厳格に定め、合格者数を減らしてでも質を担保することを大学はするでしょうか。

約52.6%の私立大学は赤字経営をしていること や、国からの運営費交付金削減によって運営されている国公立大学でさえ「授業料値上げ」(2025年の東京大学の授業料値上げが象徴的)や「設備投資の抑制」を余儀なくされる環境下において、収入の原資である授業料に直結する学生数を大幅に減らすようなことは経営上難しいと思います。

大学側も、一般入試の枠を絞って見かけの偏差値を維持しつつ、推薦や総合型選抜(旧AO入試)によって、ペーパーテストの一発勝負ではなく「優秀な学生」の獲得のため、受験方式を変えてきている印象もあります。

もう一点注視しておくべきだと思っているのは、大学の授業料無償化 が政策として話題があることです。受験する側の大学進学率などに影響すると思われますし、それに伴って受験形態にもさらに変化があるかもしれません。(人数が減っているので、下流大学を合併・廃校にしていくのが自然な流れだと思いますが、ゾンビのように生きながらえさせる政策になる気がしてならないですね。。)

粗々の推計ですが、国内の大学受験は、

  • 受験人口の大幅な減少に伴い倍率こそ変わるものの、難易度は低下していく可能性が高い。
  • 一方で、大学側も受験方式を工夫してくると思われる

ので、対策をするために傾向を注視しておく必要がある。といった感じかなと思いました。